★★★呪いのファミコンカセット★★★スレよりコピペ

ゲーム雑誌会社で働いていました。
当時はゲームと毎日向かい合っていたので、振り返るのをやめていましたが、会社自体が潰れてしばらくたち、どこの会社かバレても支障がなくなったので、その時のことを書いてみようと思います。


仕事内容とは別に、会社内でもいろいろな怖い話があるんですが、今回はソフトに関係した話を。

ゲーム雑誌には、いわゆる「裏技コーナー」というページがあります。
当時、私の会社では定期的に裏技集をまとめた本を発行していました。

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そこには最新のソフトばかりでなく、昔の……それこそFC(ファミコン)やメガドラ、あるいはもっとマイナーな滅亡機種の滅亡ソフトの技まで収録されていました。
(詳しい方なら出版社の検討がついたと思います)

そこに収められている技についての読者からの質問は、新人編集が電話で答えることになっていました。


収録されている限りは、どんなソフトでもOKです。

ある日、いつものように読者から電話がかかりました。
ソフトはSS(セガサターン)の『百物語』について。
「収録されている101話目の怪談がどうしても始まらない」というのです。


今となっては記憶が曖昧なのですが、確かあれは全100話分をすべて見ると見られる「おまけ」みたいなものだったはずです。

担当者はその旨を電話口で伝えるのですが、相手は「でも見られない。初期出荷分だけなのではないか」と言います。


そういう時にやるのは、実際にこちらで確認してみることでした。

「こちらで確認しますので、改めてお電話いただけますか?」
「時間がないので、明日までにお願いします」

電話を切ったのが午後6時前後。
相手は翌日の16時に電話をするとのことでした。
ソフトを探す時間、100話分プレイする時間、技の確認。
それを本来の仕事と並行して行わなければなりません。





幸か不幸か、この日はDC誌の校了日。
終わるまで誰も帰れないので、一晩中こうこうと電気がつき、編集部内も賑やかです。
おまけに、手が空いた人に手伝ってもらうこともできます。

新人編集と制作部の女の子たちが、交代でゲームをプレイすることになりました。

話によっては監修の稲川氏が自ら出演し、音声で進めるものもあるため、プレイをする人はイヤホンをつけました。


怖い人や興味のない人などは内容を読み飛ばして、ただボタンを押し続けるだけですが、たまに興味を持って進める人もいました。自分のように。

夜もだいぶまわり、4時くらいになった頃です。
ぶっ通しでゲームを進め、70話ほど進行しました。
このあたりの時間から自分の担当分が校了し、そのまま机や仮眠室で力尽きる人が出てきます。


そのため、プレイ人数は減っていき、やがて自分一人でプレイしなくてはならなくなりました。

イヤホンからは、稲川氏の早口のしゃべりが聞こえてきます。
正直、体力が落ちているこの時間になると、何を言っているのか聞き取ることができません。
かなり疲れていたのか、無意識に目を閉じていたようです。


不意に、音声が途切れました。

「あ、終わったのかな?」と僕は目を開けました。
話が終わると消えていく、100本ろうそくの画面が出るはずです。
しかし、そこには違うものが映っていました。





顔の下半分がグニャグニャに歪んだ老婆の顔のアップでした。
元は何かの話のクライマックス用のビジュアルなのでしょうか。
大きく口を開けた老婆が、こちらを凝視していました。

ディスクの読み込みエラーなのかもしれません。

画面の下半分だけが痙攣したようにブルブルと震え、それに合わせて老婆の口もグネグネと歪みます。


イヤホンからは稲川氏の声。
「……ジーッと見ているんですよ。……ジーッと見ているんですよ。……ジーッと見ているんですよ。……ジーッと見ているんですよ……」

その部分だけが繰り返し再生されます。妙にゆっくりと。

ソフトのフリーズはしょっちゅうですが、こんなエラーの仕方は初めてです。

やがて、リピートしていた稲川氏の音声に、ブツブツと雑音が入り始めました。
SSはディスクを読み込もうと、ガリガリと音を立てはじめます。


未セーブ分の時間がもったいないとは思いましたが、僕は怖くなり電源を落とそうと手を伸ばしました。

その瞬間、稲川氏の声がブツリと途絶え、ゲームに収録されているSE(効果音)が滅茶苦茶に再生され始めたのです。

クラクション音、風の音、カラスの声、すすり泣き、雨音、そしてゲタゲタ笑う少女の声。
老婆の画像のブレもどんどん大きくなり、顔全体が引きつったようにガクガクと歪んでいました。


僕は電源スイッチを叩き切りました。
切る瞬間、男の声で「遅ぇよ」と聞こえたのを覚えています。
そんなデータは、なかったはずですが。





僕は逃げるように席を立ち、近くでぐったりしていた同僚を叩き起こして、無理やりコントローラーを押し付けました。

彼は急に起こされて訳の分からないという表情でしたが、「怖いから続きをやってくれ」という僕の頼みに、ニヤニヤしながら代わってくれました。
明らかに小馬鹿にしている様子でしたが、仕方ありません。


しかし数分もしないうちに、彼は不機嫌そうに戻ってきました。
「データ飛んでるぞ」

スイッチが切られ、モニタには何も映っていません。
しかし、微かに映り込みがあったようで、先刻の老婆の輪郭がぼんやり残っていました。

本体の蓋を開けた状態で電源を入れます。


これでセーブデータの確認ができます。
本体メモリにセーブデータを保存していました。

しかし、データが壊れていました。
正常ならソフト名の欄に半角カタカナで「ヒャクモノガタリ」と明記されているはずなのですが、そこには「ギギギギギギギギ」と羅列してあったのです。


僕はすぐにそれを消去しました。

「どうするんだ?」と訪ねる同僚に、僕はバックアップ用の外付けメモリロムを渡しました。
10話ほど遡るけど、ここにもデータが入っているから、これで100話クリアして欲しいと頼みました。

当然嫌がられましたが、「何でもするから」と懇願し、渋々承諾してもらいました。
(このせいで後で、別の意味での恐怖体験を味わうことになったのですが、オカルトではないので省略します)

結果的には、例の裏技は普通に始まり、
「電話の相手の取り残しか、データの読み込みミスだろう」ということで決着しました。





その一件については、これで以上です。

このソフトも何かいろいろな逸話があったようなのですが、残念なことに詳しいことは知りません。
(録音トラブルが絶えなかったらしいというのは聞きました)

ゲーム開発会社や出版社というのは、何かが起こりやすい所なのだそうです。


ソフトが直接のはこれだけでしたが、不可解な話は色々ありました。

昼夜の感覚が曖昧だったり、いつも人がいたり、機械が多かったり、疲れている人が多かったり……
そういった要因が「おかしなモノ」を呼び寄せてしまうのかもしれませんね。

長々とすみませんでした。





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