南アフリカの洞窟で見つかった古代人類ホモ・ナレディ。その歯から、男性の痕跡が見つからなかった。
調べられた化石歯は、すべて女性個体だった可能性があるという。
もちろん、これだけで「女性だけの墓地だった」と断定はできない。だが、洞窟の奥に残された古代人類の骨から、男性を示す手がかりが出てこないという結果は、それだけで十分に奇妙だ。
なぜ、そこには女性ばかりが残されていたのか。
男性の骨は、どこにあるのか。
ホモ・ナレディの謎は、また一段深くなった。
調べられた化石歯は、すべて女性個体だった可能性があるという。
もちろん、これだけで「女性だけの墓地だった」と断定はできない。だが、洞窟の奥に残された古代人類の骨から、男性を示す手がかりが出てこないという結果は、それだけで十分に奇妙だ。
なぜ、そこには女性ばかりが残されていたのか。
男性の骨は、どこにあるのか。
ホモ・ナレディの謎は、また一段深くなった。
洞窟の奥に残された古代人類
ホモ・ナレディの化石は、南アフリカのライジングスター洞窟系で見つかった。
場所は、地上の開けた遺跡ではない。狭い通路を抜けた先にある、簡単にはたどり着けない地下空間だった。
ここでまず引っかかる。
なぜ、そんな場所に古代人類の骨がまとまって残されていたのか。
事故で入り込んだのか。自然の作用で集まったのか。それとも、誰かが死者を洞窟の奥へ運んだのか。
ホモ・ナレディは、発見された場所そのものが謎を生んでいた。

小さな脳を持つ、奇妙な人類
ホモ・ナレディは、現代人とはかなり違う。
脳は小さい。そこだけ見れば、複雑な文化や死者への意識を持っていたとは考えにくい。
しかし、体の特徴は単純ではない。手や足、歩行に関わる部分には、人間に近い要素もある。古い特徴と、人間的な特徴が同じ体の中に混ざっていた。
だから、この古代人類は分かりにくい。
「脳が大きくなったから、人間らしくなった」という単純な話に、ホモ・ナレディは収まらない。
ホモ・ナレディの骨格標本。画像:
Lee Roger Berger research team / eLife / Wikimedia Commons
/
CC BY 4.0
性別の手がかりは歯に残っていた
今回注目されたのは、歯だった。
歯のエナメル質には、非常に古いタンパク質が残ることがある。DNAが壊れていても、タンパク質から性別の手がかりを探せる場合がある。
研究チームは、ホモ・ナレディの化石歯を分析した。
そこで確認されなかったのが、男性を示すY染色体由来のタンパク質マーカーだった。
一方で、女性側に対応するマーカーは確認された。つまり、少なくとも今回調べられた範囲では、男性の痕跡が見つからなかったことになる。
「全員女性だった」と決まったわけではない。
ただ、「男性が見つからない」という結果は残った。

男性の骨はどこにあるのか
一番強い謎はここにある。
本当に女性に偏っていたのなら、男性はどこにいたのか。
まだ分析されていない化石の中に男性がいる可能性はある。たまたま今回の歯が女性個体に偏っただけかもしれない。
また、ホモ・ナレディ側に、男性マーカーが検出されにくい生物学的な事情があった可能性も残る。現代人でも、Y染色体側の一部に欠失が見られる例はある。
それでも、読者の頭には疑問が残る。
同じ洞窟に男性の痕跡がないのは、ただの偶然なのか。
それとも、その場所に残される個体には何か条件があったのか。
「女性だけ」という言葉の強さは、そこにある。
そこは墓だったのか
ホモ・ナレディをめぐっては、以前から「死者を意図的に洞窟へ運んでいたのではないか」という説が議論されてきた。
もしそれが正しければ、洞窟は単なる事故現場ではない。
死者を置く場所だった可能性が出てくる。
暗い洞窟の奥へ遺体を運ぶ。同じ場所に複数の個体が残される。そして今回、そこに残された個体が女性に偏っていた可能性まで出てきた。
偶然なのか。習慣なのか。選ばれた場所だったのか。
ここから先は、簡単には決められない。
ロマンだけでは危うい
ただし、この話はまだ決着していない。
「女性だけの古代墓地が見つかった」と言えば見出しは強い。だが、そこまで言い切るには証拠が足りない。
骨が自然に集まった可能性はないのか。洞窟内の堆積や崩落、動物による移動は十分に排除できるのか。男性マーカーが出ない理由は、本当に性別だけで説明できるのか。
古代人類の話は、面白い仮説ほど慎重に扱う必要がある。
今言えるのは、もっと控えめなことだ。
調べられた範囲では、男性を示す痕跡が見つからなかった。
その骨は、洞窟の奥に残されていた。
そして、その場所の意味はまだ分かっていない。
この距離感が、一番誠実で、一番不気味でもある。

死者を扱う感覚はいつ始まったのか
もしホモ・ナレディが死者を洞窟へ運んでいたなら、人間らしさの始まりはかなり複雑になる。
脳が小さくても、死者を特別に扱っていた可能性が出てくるからだ。
死んだ仲間を放置せず、暗い場所へ運ぶ。何度も同じ場所に残す。そこに、何らかの選び方があったかもしれない。
それは現代人の宗教や葬送と同じものではない。そこまで言うのは早い。
ただ、死者をどう扱うかは、人間らしさを考えるうえで避けられない問題だ。
ホモ・ナレディは、小さな脳を持ったまま、その問題をこちらに突きつけてくる。
彼女たちはなぜそこにいたのか
今回の研究で、ホモ・ナレディの謎が解けたわけではない。
むしろ、問いがはっきりした。
なぜ、男性の痕跡が見つからなかったのか。
なぜ、骨は洞窟の奥にあったのか。
そこは墓だったのか、事故の跡だったのか、それとも別の意味を持つ場所だったのか。
暗い洞窟の奥に残された骨。
小さな脳を持つ古代人類。
そして、男性の痕跡が見つからなかった歯。
彼女たちは、なぜそこにいたのか。
その問いだけが、今も洞窟の奥に残っている。
ホモ・ナレディの化石は、南アフリカのライジングスター洞窟系で見つかった。
場所は、地上の開けた遺跡ではない。狭い通路を抜けた先にある、簡単にはたどり着けない地下空間だった。
ここでまず引っかかる。
なぜ、そんな場所に古代人類の骨がまとまって残されていたのか。
事故で入り込んだのか。自然の作用で集まったのか。それとも、誰かが死者を洞窟の奥へ運んだのか。
ホモ・ナレディは、発見された場所そのものが謎を生んでいた。

小さな脳を持つ、奇妙な人類
ホモ・ナレディは、現代人とはかなり違う。
脳は小さい。そこだけ見れば、複雑な文化や死者への意識を持っていたとは考えにくい。
しかし、体の特徴は単純ではない。手や足、歩行に関わる部分には、人間に近い要素もある。古い特徴と、人間的な特徴が同じ体の中に混ざっていた。
だから、この古代人類は分かりにくい。
「脳が大きくなったから、人間らしくなった」という単純な話に、ホモ・ナレディは収まらない。
今回注目されたのは、歯だった。
歯のエナメル質には、非常に古いタンパク質が残ることがある。DNAが壊れていても、タンパク質から性別の手がかりを探せる場合がある。
研究チームは、ホモ・ナレディの化石歯を分析した。
そこで確認されなかったのが、男性を示すY染色体由来のタンパク質マーカーだった。
一方で、女性側に対応するマーカーは確認された。つまり、少なくとも今回調べられた範囲では、男性の痕跡が見つからなかったことになる。
「全員女性だった」と決まったわけではない。
ただ、「男性が見つからない」という結果は残った。

一番強い謎はここにある。
本当に女性に偏っていたのなら、男性はどこにいたのか。
まだ分析されていない化石の中に男性がいる可能性はある。たまたま今回の歯が女性個体に偏っただけかもしれない。
また、ホモ・ナレディ側に、男性マーカーが検出されにくい生物学的な事情があった可能性も残る。現代人でも、Y染色体側の一部に欠失が見られる例はある。
それでも、読者の頭には疑問が残る。
同じ洞窟に男性の痕跡がないのは、ただの偶然なのか。
それとも、その場所に残される個体には何か条件があったのか。
「女性だけ」という言葉の強さは、そこにある。
ホモ・ナレディをめぐっては、以前から「死者を意図的に洞窟へ運んでいたのではないか」という説が議論されてきた。
もしそれが正しければ、洞窟は単なる事故現場ではない。
死者を置く場所だった可能性が出てくる。
暗い洞窟の奥へ遺体を運ぶ。同じ場所に複数の個体が残される。そして今回、そこに残された個体が女性に偏っていた可能性まで出てきた。
偶然なのか。習慣なのか。選ばれた場所だったのか。
ここから先は、簡単には決められない。
ただし、この話はまだ決着していない。
「女性だけの古代墓地が見つかった」と言えば見出しは強い。だが、そこまで言い切るには証拠が足りない。
骨が自然に集まった可能性はないのか。洞窟内の堆積や崩落、動物による移動は十分に排除できるのか。男性マーカーが出ない理由は、本当に性別だけで説明できるのか。
古代人類の話は、面白い仮説ほど慎重に扱う必要がある。
今言えるのは、もっと控えめなことだ。
調べられた範囲では、男性を示す痕跡が見つからなかった。
その骨は、洞窟の奥に残されていた。
そして、その場所の意味はまだ分かっていない。
この距離感が、一番誠実で、一番不気味でもある。

死者を扱う感覚はいつ始まったのか
もしホモ・ナレディが死者を洞窟へ運んでいたなら、人間らしさの始まりはかなり複雑になる。
脳が小さくても、死者を特別に扱っていた可能性が出てくるからだ。
死んだ仲間を放置せず、暗い場所へ運ぶ。何度も同じ場所に残す。そこに、何らかの選び方があったかもしれない。
それは現代人の宗教や葬送と同じものではない。そこまで言うのは早い。
ただ、死者をどう扱うかは、人間らしさを考えるうえで避けられない問題だ。
ホモ・ナレディは、小さな脳を持ったまま、その問題をこちらに突きつけてくる。
彼女たちはなぜそこにいたのか
今回の研究で、ホモ・ナレディの謎が解けたわけではない。
むしろ、問いがはっきりした。
なぜ、男性の痕跡が見つからなかったのか。
なぜ、骨は洞窟の奥にあったのか。
そこは墓だったのか、事故の跡だったのか、それとも別の意味を持つ場所だったのか。
暗い洞窟の奥に残された骨。
小さな脳を持つ古代人類。
そして、男性の痕跡が見つからなかった歯。
彼女たちは、なぜそこにいたのか。
その問いだけが、今も洞窟の奥に残っている。
参考・引用元
・Max Planck Society「Ancient teeth suggest Homo naledi fossils in a cave may all be female」
・Cell「Proteomic analysis of dental enamel from 20 Homo naledi individuals shows no male markers」
・Smithsonian Human Origins Program「Homo naledi」
・eLife「Homo naledi, a new species of the genus Homo from the Dinaledi Chamber, South Africa」
・La Trobe University「No scientific evidence Homo naledi was advanced」
・eLife Reviewed Preprint「Evidence for deliberate burial of the dead by Homo naledi」
哲学ニュースnwk















