ゲームには、特定の条件で現れる謎の画面や、誰もいない世界に現れる人物など、さまざまな噂がある。

本物の隠し要素もあれば、バグや創作から生まれた話もある。有名な10本について、確認できる事実と、なぜ信じられたのかを見ていこう。
ゲーム都市伝説


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子ども向けゲームに隠されていた罵倒
『えりかとさとるの夢冒険』

実話
1988年にファミコンで発売された『えりかとさとるの夢冒険』は、双子の兄妹が動物たちの世界を旅するアドベンチャーゲームだ。二人同時プレイにも対応し、物語も画面も子ども向けに作られている。

ところが特定の画面で長時間待ち、複雑な操作をすると、開発スタッフの一人が残したとみられる文章が現れる。制作に関わった人への感謝だけでなく、同僚への罵倒や仕事への不満も書かれていた。

これは都市伝説ではない。実機で再現でき、ROM内にも文章が残っている。実名や下品な表現を含むため、ここでは全文を紹介しない。

プレイヤーを怖がらせる演出ではなく、制作現場の感情が完成品へ漏れ出したものだ。明るいゲームの裏に、締め切りや人間関係に疲れた大人がいた。作り物の怪談にはない生々しさがある。
 
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終わるはずの夏休みが続いてしまう
『ぼくのなつやすみ』8月32日

実在するバグ
初代PlayStationの『ぼくのなつやすみ』は、1970年代の田舎で少年が8月の一か月を過ごすゲームだ。虫を捕り、魚を釣り、31日になると夏休みは終わる。

ところが特定の操作により、存在しない「8月32日」へ進めてしまう。朝はいつものように始まるが、やがて家族の顔や体が別の画像に置き換わり、文字や音楽も崩れていく。

隠しシナリオではない。想定外の日付に入ったため、無関係なデータを誤って読み込むバグだ。開発者の綾部和氏も、発売後に判明した不具合だと説明している。

それでも8月32日が怪談になったのは、ゲームの題材と偶然かみ合ったからだろう。終わってほしくない夏休みを無理に延ばすと、人も会話も壊れ、日付だけが進む。単なる表示異常に、物語が生まれてしまった。 
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起動すると「すぐにけせ」
『真・女神転生』

未確認の都市伝説
スーパーファミコン版『真・女神転生』には、起動時にごく低い確率で異常な画面が出るという噂がある。ロゴもタイトルも表示されず、黒い背景を「すぐにけせ」の文字が埋め尽くす。電源を入れ直すと元に戻るという。

発生確率は6万5536分の1、初期出荷版だけに入っている、文字が少しずつ増えるなど、細部には複数の型がある。しかし発生を裏づける実機映像はない。流通しているROMの解析でも該当する文字列や処理は確認されず、開発に関わった鈴木一也氏も、担当プログラマーに確認したうえで否定している。

後から作られた都市伝説である可能性は高い。それでも広まったのは、『真・女神転生』の設定と相性がよかったからだ。コンピューターから悪魔が現れる作品なら、ゲーム自体が警告してきてもおかしくない。「すぐにけせ」という説明のなさも、かえって想像を誘う。

当時は接触不良で画面が乱れても、その場で映像を残せなかった。実際に見た異常表示と、後から聞いた噂が混ざった人もいただろう。発生条件だけが詳しく、肝心の証拠はない。その確かめにくさが噂を残した。 
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遊ぶと記憶を失う謎のゲーム
Polybius

実在の証拠がない都市伝説
1981年、米国オレゴン州ポートランドのゲームセンターに、見慣れない筐体が置かれたという。名前は「Polybius」。遊んだ人は頭痛や吐き気、幻覚、記憶障害に悩まされ、黒服の男たちが定期的にプレイ記録を回収していた。政府による精神操作実験だった、というのが有名な筋書きだ。

しかし、1981年の稼働を示す筐体、ROM、広告、営業資料は見つかっていない。当時の証言とされる話も多くは噂が広まった後のもので、確認できる初期のネット記録は2000年ごろまでしかさかのぼれない。

一方、元になったとみられる出来事はある。1981年のポートランド周辺では、長時間ゲームを続けた若者が体調を崩した。また捜査機関が、違法賭博などの捜査でゲームセンターを監視し、筐体の記録を調べることもあった。

ゲームで倒れた若者と、筐体を調べる捜査官。別々の事実をつなげれば、秘密実験の物語ができあがる。画面写真すらないため、内容を否定する材料もない。存在は確認できないのに来歴だけが詳しいという逆転が、Polybiusを本物らしく見せている。
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クリアすると消えるゲーム
Killswitch

創作から生まれた都市伝説
伝説によると、Killswitchは1989年にソ連の「Karvina Corporation」が約5000本だけ発売したパソコンゲームだ。地下の鉱山を進み、クリアすると自身のデータを削除する。コピーも再インストールもできず、二度と遊べない。

後に未開封品がネットオークションへ出品され、高額で落札された。購入者はプレイ動画を公開し始めたが、意味の分からない映像を残して消息を絶った、と話は続く。

会社もゲームも実在しない。出所は、作家キャサリン・M・ヴァレンテが2007年に発表した創作である。ところが設定だけが作者の手を離れ、幻のゲームとして広まった。

ゲームは失敗すればロードでき、見逃した場面もやり直せる。Killswitchは、その前提を逆にした。一度しか遊べず、クリアした本人さえ内容を確かめ直せない。証拠がないこと自体が設定で説明されるため、都市伝説としても崩れにくい。
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一人用の世界に現れる白い目の男
MinecraftのHerobrine

創作から広まった都市伝説
Minecraftを一人で遊んでいると、霧の向こうに誰かが立っている。主人公のスティーブに似ているが、目だけが白い。近づくと消え、あとには不自然な坑道や小さなピラミッド、葉のない木が残る。この人物がHerobrineだ。

始まりは2010年ごろ、海外掲示板へ投稿された画像と短い話だったとされる。配信者がHerobrineを仕込んだ生放送を行い、映像を見た人たちが噂を広げた。通常のMinecraftに存在した証拠はなく、開発側も否定している。

ただし公式は、アップデート内容に「Removed Herobrine(Herobrineを削除)」という一文を何度も加えた。最初からいないものを削除したという冗談が、伝説を延命させた。

Minecraftの地形は自動生成され、人工物に見える形も偶然できる。洞窟から音がしても、すぐには原因が分からない。誰かが作ったのか、ただの地形なのか。その判断がつかない世界では、遠くの人影も見間違いだけでは片づけにくい。
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中古ゲームに残っていた「BEN」のセーブデータ
BEN Drowned

創作・ARG
ある大学生が、中古の『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』を手に入れる。カセットには「BEN」というセーブデータが残っていた。

データを消して最初から始めても、登場人物は主人公をBENと呼ぶ。音楽が乱れ、いるはずのない場所に人物が立ち、主人公そっくりの像が追ってくる。やがて異常はゲームを越え、投稿者のパソコンや文章にも現れ始める。

BEN Drownedは、アレックス・ホールが2010年に始めた創作ホラーだ。文章、加工したゲーム映像、読者とのやり取りを組み合わせたARGとして展開され、読者の指示が次の映像へ反映されることもあった。

土台にあるのは、中古ゲームに残ったセーブデータへの違和感だ。知らない名前と、途中で止まった記録。誰が遊び、なぜ手放したのかは分からない。ゲームの記録であると同時に、前の持ち主が残した生活の断片でもある。

『ムジュラの仮面』も、月が落ちるまでの三日間を繰り返す作品だ。終末を待つ町と、同じ行動を続ける住人。もともとの不穏さへ他人の記憶が加わり、ゲーム内の異常が現実へ出てくる物語になった。
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子どもにだけ影響するという音楽
シオンタウン症候群

クリーピーパスタ
噂では、初代『ポケットモンスター』の発売直後、日本各地で子どもの自殺や体調不良が急増した。原因はシオンタウンのBGM。大人には聞こえない高周波が、子どもの脳だけに影響したとされる。海外では「Lavender Town Syndrome」と呼ばれている。

そのような死亡事件は確認されていない。話が広まったのも発売時の1996年ではなく、2010年ごろに海外の投稿サイトや匿名掲示板へ載った文章がきっかけとみられる。ネット上で作られたクリーピーパスタだ。

シオンタウンにはポケモンの墓地があり、幽霊も登場する。高い音を使ったBGMも、それまでの町とは明らかに違う。子どもの頃、曲が苦手ですぐ町を出た人もいるだろう。

さらに1997年には、アニメ版の強い光の点滅で多くの視聴者が体調不良を訴える事件が起きた。BGMとは無関係だが、「ポケモンが子どもの体に影響した」という記憶は残った。怖い音楽と、無関係だが実在した放送事故。そこへ架空の死亡事件が加わり、もっともらしい怪談になった。
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すべての『スーパーマリオ64』は内容が違う

ネット発の都市伝説
『スーパーマリオ64』は、カセットごとに内容が違う。そんな説がある。ゲーム内の人工知能がプレイヤーの性格や行動を分析し、ステージ、音楽、登場人物を変えているため、自分だけが見た部屋やキャラクターが存在するというのだ。

「Every copy of Super Mario 64 is personalized」と呼ばれ、2019年から2020年ごろに海外で流行した。巨大なワリオの顔に追われる映像や、存在しないステージを再現した動画も作られた。

ゲームにそのような人工知能はない。地域や発売時期による違いはあっても、持ち主に合わせて世界を変える仕組みではない。

それでも信じたくなる余地はある。発売当時、立体空間を自由に歩くゲームはまだ珍しかった。ピーチ城には開かない扉や行き止まりがあり、遠景は霧に隠れ、地下には誰もいない通路が続く。明るいのに、人の気配が薄い場所も多い。

子どもの頃の記憶には、友達の家で見た場面、攻略本、雑誌、改造映像、夢まで混ざる。人は映像の内容より、どこで見たかを先に忘れる。「自分で遊んだ」という感覚だけが残れば、存在しない場面も個人的な記憶になる。違っていたのはカセットではなく、持ち主の記憶だったというわけだ。
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誰もいないオンラインゲームで試合が始まる
No Players Online

都市伝説を題材にしたホラー作品
古いオンラインFPSを起動する。接続人数はゼロだが、一つだけ入れるサーバーが残っている。

中にあるのは無人の対戦マップ。相手はいないので、敵の旗を取って自陣へ運ぶだけでいい。銃声もチャットもない。ところが何度か旗を運ぶうちに、本当に誰もいないのか分からなくなる。

『No Players Online』は2019年に公開された短編ホラーゲームで、古い実在ゲームの怪談ではない。最初からフィクションとして作られ、後に内容を拡張した新バージョンも発売された。

家庭用ゲームは、本体とソフトが動けば同じ場所へ戻れる。オンラインゲームは、サーバーが閉じると世界ごと失われる。人が集まった町も対戦マップも、プレイヤーの手元には残らない。

閉鎖されたはずのサーバーへ、もう一度だけ入れたらどうするか。懐かしい場所は見たい。しかし、無人の世界から返事が来てほしくはない。オンラインゲームの消え方を、そのままホラーにした作品である。

ゲームの都市伝説は、どうやって生まれるのか

10本の中には、本物の隠し要素、バグ、後から作られた創作が混ざっている。共通するのは、ゲーム内に説明されない部分があったことだ。

不自然な音楽や表示の乱れが噂の材料になり、友人から聞いた話やネット上の創作が足されていく。昔は奇妙な場面を見ても、すぐには記録できなかった。再現しなければ、バグか見間違いかも分からない。

真偽を分けることは必要だ。ただ、作り話だと分かっても怖さが消えない場合がある。自分のゲームでも起きそうだと思える程度に、現実の違和感が残っているからだ。

参考資料

『えりかとさとるの夢冒険』隠しメッセージ技術資料:i486.mods.jp
『ぼくのなつやすみ』8月32日・綾部和氏インタビュー:電撃オンライン
「すぐにけせ」開発関係者インタビュー:ガジェット通信
Polybius掲載ページ:CoinOp.org
Polybius調査記事:Inverse
Killswitchの出所となった作者の企画告知:Catherynne M. Valente
Herobrineの成立史:PC Gamer
Minecraft公式「Removed Herobrine」記載例:Minecraft公式
BEN Drowned作者インタビュー:Arcade Attack
シオンタウン症候群の成立過程を扱った研究:Spokus
スーパーマリオ64都市伝説の成立史:Know Your Meme
No Players Online Classic:itch.io

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